2009年3月25日水曜日

ガソリン車から電気自動車へ…ただしさまざまな問題点も

こんな記事が出てました。
出典は、こちらです。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0325&f=business_0325_003.shtml


  前回は、これからの世の中は電気自動車が普通になることを述べた。ここで、電気自動車が広く普及する時代になって一番困る会社は、どこだろう。SS業界を除けば、「車はモーターでも走る」ことをプリウスで証明しパンドラの箱を開けてしまったトヨタではないだろうか。

  自動車メーカーは、エンジンを含むパワーユニットを作ってこそメーカーで、そこに付加価値がある。例えばBMWの社名の由来も、バイエルンの(飛行機)エンジン製造会社。要するに車作りは、エンジン作りだったのだ。一方電気自動車は、モーターとバッテリーと制御システムさえあれば良く、電気メーカーでも作れる。また燃料電池車やハイブリッド車の開発コストと比較すれば、電気自動車の開発コストは、遥かに少なくて済む。自動車会社の中で、決して勝ち組とは言えなかった三菱自動車だからこそ、開発できたのではないだろうか。
  
  また一般のガソリン車の部品点数が仮に3万とすると電気自動車は約1万点で出来ると言われている。またエンジンのように高温部分がないので、ボンネットも鉄の必要はなくプラスチックとかカーボンファイバーで代用できる。その結果、車両重量は軽くなるので燃費ならぬ、走行エネルギー効率はますます上がる。また部品点数が1/3ということは、故障発生確率が格段に少なくなる。これは自動車整備業界もかなりの打撃を受ける可能性がある。
 
  このような電気自動車になって困る会社や困る業界がある反面、おもちゃの「タカラ」がチョロQの実車版を出して話題になったように、マブチモーターやラジコンで有名な京商が、1-2人乗りの小型電気自動車を趣味感覚で販売するかもしれない。個人的に大歓迎で、車離れしている若者が、デートで二人乗りのEVカーにのって湘南の海から箱根ターンパイクを通って、芦ノ湖に一泊旅行したらペンションでは「ご予約の方は電気代無料」のサービス。こんな時代は意外に早く来るかもしれない。

  急速充電できる電気スタンドは、1基300万円で既に開発済みだ。当局でも補助金を検討中なので楽しみだが、大きな問題が3つあることに気がついた。一つは、入力三相200V、最大出力50kW (500V 125A) という電気容量だ。通常のSSはキュービクル無しで電気容量がほぼ一杯なので、SSにこれを設置するには、300万円もするキュービクルという変電装置が必要となるが、この費用までは補助金対象となっていない。

  二つ目は、更に基本料金の大幅増という問題だ。通常SSは、「従量電灯C」と業務用の「低圧電力」を契約している。普通の従量電灯の料金単価は24円/kWに対し、業務用低圧電力は、約半分の12円/kWと安いのでが、基本料金が高いのだ。仮に50kW増えると基本料金単価は1071円/kWなので、月額53550の増。 また基本料金はこの容量を1度でも使うと確か1年間下げてもらえない。

  よってたまにしか来ない電気自動車のために初期投資が約600万円。基本料金が年60万円、5年間で300万円。合計900万円の費用は環境貢献費としても許容範囲外だ。もし本気でSSに導入するなら、エネ庁だけでなく経済産業省も電力会社も協力して、電柱のトランスから直接ケーブルを引き、キュービクルも不要、基本料金も据え置きにして従量料金だけにする。電力会社も含めたこの位のバックアップ体制がないと、補助金事業としても難しいだろう。

  そして三つ目の問題は、頂く電気料金だ。iMiEVの電池容量は16kW。ロスなく満充電すると、一般家庭の昼間電力単価 24円/kWでも16kW X 24円/kW = 384円。目を疑う安さで驚く。一方最大走行距離160km、1kmの走行コストは3円との発表だから、これから計算しても480円。実は電力会社もこの事実を知って驚いたらしい。この従量電気代とは別に、急速充電基本手数料的なものを1000円頂くとしても、投資は回収は出来ず、営利事業としては、かなり難しいのと思える。

  またこの料金以前の根本的な問題として一般家庭で充電出来るのに電気スタンドとしてニーズは本当にあるのだろうか。自宅の駐車場でコンセントに繋いでおけば100Vで14時間。200Vなら7時間で満充電。昨今の家庭の配電盤には、200Vが既に来ているので、それを駐車場まで引くのにたいした費用はかからない。夜帰ったとしても、翌朝7時には満充電で毎日160km走るなら、何の不自由もない。

  また既に設置を表明している大手スーパーや郵便局だけでなく、今後は、外食レストラン、デパート駐車場、コインパーキング等、急速充電器はなくても100V、200Vでの簡易充電ができる場所はますます増えてくるだろう。 お客様にとっての目的地に簡易充電システムがあるなら、目的地ではないSSにわざわざ来ない。むしろ自宅で充電を忘れた時にだけ、いやいや来て高い急速充電料金を支払う。これでは「感動」を成功のキーワードにする弊社の戦略には、合わなくなっていくような気がする。
 
  最後に燃料電池自動車(FCEV)について私見を述べたい。2005年以前のモーターショーは、さしづめ燃料電池自動車の技術品評会のようだったが、2007年は一変、燃料電池車の実車を展示したのはホンダのみ。そして電気自動車を改めて勉強してみると、燃料電池車も電気自動車の一種だと気がつく。究極の技術の集約である「燃料電池」に対して理工系の筆者としては、大変失礼とは思うが、それは単なる発電機だ。当然車載用だから軽量かつコンパクトが絶対条件。その「車載用の発電機」として本当にFCが最も優れているのか。
 
  東京のLPガスエリアで第一号の定地式燃料電池の実証試験をした実感では、「電気」と発生する「熱」の両方を使っても、イニシャルとランニングの両コストの回収に苦労しているのに、車は電気しか使わず熱は大気放出で捨てている。まして脱硫ガソリンを積んで水素を取り出す改質方式は、更に高コストになる。どうしても水素を使いたいなら前述の水素ロータリーエンジンで発電する方が効率的。

  そもそもプラグインで簡単に充電できるなら、高いFC発電機を車に積む必要性は低いのではないだろうか。結局、電気自動車の発電機としてFCは実は向いていないことを、自動車会社自身が認めざるを得なくなってきたいのではないとか思う。(執筆:垣見 裕司 石油・SS業界アナリスト、提供:オーバルネクスト)

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