2008年7月2日水曜日

ここまで考えての戦略なのでしょうか?

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優秀な技術者を屋台骨事業に投入する■■━━━━━━━━━
情報源:日本経済新聞 2008.07.01【11面】━

◆マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が経営の第一線から離れるというニュースが話題になっている。それに呼応して、「ポストゲイツの時代」という連載記事が日本経済新聞に掲載されている。

◆記事は、1990年代にゲイツ氏がパソコン業界を席捲したことに触れる一方で、最近のマイクロソフトの苦戦ぶりを、次のように伝えている。

◆「MS(マイクロソフト)はパソコンの成功を他分野に広げようと、90年代から家電、携帯電話、車載端末用のOS開発を進めたが、戦績は『惨敗』」。

◆このことについて記事は、MS日本法人の元社長である成毛真氏のコメントを紹介している。「成功体験が大きいため、優秀な技術者がパソコン事業に集まってしまう」。

◆マイクロソフトといえば、やはりパソコン用OSの「ウィンドウズ」であり、それが屋台骨事業だ。そこに「優秀な技術者」が集まるのは当然といえるのだが、それが「落とし穴」だという。

◆先日(6/18)、私が講師を務めた講演会で、戦略について、「バランスは崩さなければならない」と話した。屋台骨事業に優秀な人材を投入するのは、バランスとしては良い。

◆しかし、あえてそれを崩さなければならない。「成功体験」に埋没するとは、バランスのとれた状態に安住することを意味する。マイクロソフトほどの企業を論評するのはおこがましいが、中小企業でも、そのような「勘違い」を起こしているケースは、しばしば見られる。


「バランス」「安定」は「停滞」を意味する■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●たとえば人員の配置をどうするかを考えたとする。売上高や粗利益高に応じて部門・部署に配分するのは、考え方として筋が通っているように見える。数学的にも美しいと言えるかも知れない。

●しかし、そこに将来を見据えた戦略はない。バランスがとれた状態は、「安定」というより「停滞」だ。どの方向にも進まないからだ。人間でも、体のバランスを崩すことで前へ歩き出すことができる。

●人員の話でいえば、これから伸びるであろう事業に重点的に配置しなければならない。正確には、経営資源を重点配分するわけだ。だから、少なくとも一時的にはバランスが崩れる。

●当然、その事業は赤字でスタートする。企業には「健全な赤字部門」というものが必要であり、意図的にバランスを崩すことをしていることによる。

●PPM(Product Portfolio Management)分析でいうところの「問題児」の事業が、その「健全な赤字部門」にあたる。「問題児」を「花形」に育て、そしていずれは「金のなる木」に仕立てていく。

●屋台骨事業もあれば赤字事業もあるという意味での「バランス」を保つようにする。そうすることで、事業のライフサイクルを超え、企業は永続的な存在となることができる。

●マイクロソフトの場合、優秀な人材を屋台骨のパソコン事業ではなく、将来の成長市場を狙える「問題児」事業に投入すべきだったということなのだろう。

●企業経営は、将来のありたい姿を希求することだと言える。バランスを求めるなら、現在ではなく将来を見据えて考える必要がある。結果として、いつまで経っても、「安定」状態にはならない。それでよいのだ。


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